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誇りに思う・・・

2015年6月15日(月)

一週間前の火曜日、

海から帰るとメールと数本の着信履歴。

悪い予感は的中するもので、

届いていたのは佐藤聖二氏の訃報。

何時かこの日が来る、

と覚悟はしてた。

余命三ヶ月の診断から闘病一年。

見舞いに行っても常に前向きで、

笑顔を絶やさなかった。

闘病中にも拘らず

うちの弟子が指導を求めても

快く受け入れてくれた。

死を眼前に、

その虚無抱きながらも

拳に生涯をかけた姿勢は微塵も揺るがなかった。

佐藤聖二氏という人間に出会えた事。

そして共に稽古する時間を共有できた事。

それを自分は誇りに思う・・・。

―――

人生は出会いだ。

人や物、

そして出来事との邂逅が全て。

産まれ落ちて父母と出会い、

友と出会い

伴侶と出会い

師と出会い、

そして別れるのが生きる事だとわかっていても、

佐藤聖二氏との出会いは

同じく武術に志を持った自分にとっては

身の半分を形作ったほどの大きさがある。

同時にその別れは

半身を削り取られる痛みでもある。

その思いは日を重ねるごとに強くなる。

溜息なんかついても始まらないのは判っていても、

やっぱり出てくるんだな、

溜息・・・。
―――

澤井先生に日本と中国の架け橋になれ、

と送り出された氏のお陰で

太気拳は源流である意拳と再びまみえる事が出来、

そして今の自分が形作られた。

澤井先生との出会いがあって本当の武術を知り、

聖二氏の導きによって姚氏と触れあい、

その後の稽古に生かすことが出来た。

自分の拳、太気拳の半分は

意拳との出会いで削りだされたものだ。

―――

先生が亡くなった後での神宮での稽古。

あれは秋だったかな・・・。

二十五年も前の事だ。

駅前の中華料理屋で遅い昼食。

その時氏が一言「中国に一緒に行きませんか」。

今思い返せば、

この一言が太気拳を大きく変える一言だったな。

否、氏のこの時の言葉は、

太気拳だけでなく、

意拳の現在をも変える一言だった。

―――

太気拳と意拳の交流が始まったのは

この一言からだった。

日中の交流で氏は実に大きな役割を果たした。

それこそ澤井先生の言われた「架け橋」。

この「架け橋」がどれだけ大きな変化をお互いにもたらした事か。

こんな文章では図りきれないほど大きい・・・。


―――

さて、随分二人で飲んだな・・・。

神田近辺をはしごして歩いたっけ。

ある時、

飲み屋から出て

なんかこんな風になっちゃって、

と脇の駐車場で推手、発力。

三メートルくらい吹っ飛ばされた。

あれは何年位前になるのかな。

その頃自分はまだそんなレベルではなかったんで、

帰りの電車で、

随分と悔しい思いをしたもんだ。

―――

またある時は、

稽古中にお弟子さんと来てくれたこともあった。

推手をお願いしたうちの弟子を

脇のブロック塀に叩きつけて、

厳しさを教えてくれた。

優しい性格だったが、

武術には妥協しなかった。

―――

やっと氏に追いついた頃、

皆たいしたもんですね、

とあくまでも謙虚だった。

―――

葬式に出ていて気付いた。

そういえば、

君の結婚式にもこの礼服で出たんだ。

今同じ服を着て

見送ることになった。

―――

車の中で島田氏に言った。

最初に俺がお前を見送ってな、

そして次は俺が聖二氏や鹿志村氏に見送られて、

逝っちゃうんだろうな、

そんな順番だと思ってたよ。

本当にそう思ってたんだ。

島田氏も、

俺もそう思ってたさ。

前半は逆だけどな・・・。

何で年上の自分が見送らなきゃいけないんだ・・・。

―――

でもな、

判ってるよ・・・、

やらなくちゃいけない事は。

国を超えて、

時代を超えて、

繋がってきたものを、

再び繋げていかなくちゃいけないって事。

それをやらないと、

先生に合わせる顔が無い。

―――

今頃は澤井先生や姚宗勛先生との挨拶も終わって、

一杯始める頃かも知れないな。

その席には私の分の予約も入れといてくれよ。

暫くしたら行くんだから。

その時には

姚先生に紹介を上手く頼む。

初対面だからな・・・。

―――

やっぱり、

あの世でも世話になりっぱなしかな・・・。

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コメント

今アマゾンで書籍を探し当てて購入しましたら佐藤聖二先生の遺したノートを見つけました。

私は10年以上前に田端の公園を訪ねて初めて太気拳を体験しました。何から何まで見ることも触れる事も初めてで衝撃でしたが更に吹っ飛ばされた時のあの感覚が一番衝撃でした。そして今亡くなられた衝撃を受けています。
ズブの素人で自衛隊の先輩と訪ねたのですが、2人して本当に親切に教えて下さいました。吹っ飛ばしてくれました!

私も先輩も自衛隊を辞め私は日本を捨てたも同じでフランスにいますが、どうか安らかにお過ごしになられて下さい、ご冥福をお祈りします! ありがとうございました。

投稿: 松下寛英 | 2018年3月 7日 (水) 05時42分

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